Neonatorの備忘録

新生児科医の徒然日記

日本周産期・新生児医学会 専門医について その3

 

今回は出願者数や合格者数に関するお話をします。

 

日本周産期・新生児医学会の専門医にはA領域、B領域があります。A領域は産科領域、B領域は新生児領域を示しています。

 

2024年度の出願者数は、学会からのメールによるとA領域とB領域を合わせて212名です。

 

このうち、症例要約(書類審査)に合格した人数は、下記のページを参照すると、A領域が104人、B領域が55人、合計で159人になります。

https://www.jspnm.jp/modules/notice/index.php?content_id=116

 

つまり、出願者数から推測した書類審査の合格率は75%になります。領域ごとの出願者数は公開されていないため、領域ごとの通過率はわかりません。

 

そして、2024年度のCBT試験合格者数(最終的な合格者数)は、A領域が112人、B領域が60人、合計172人でした。なぜか書類審査の合格者数より多くなっています。昨年書類審査は通過したもののCBT試験で落ちてしまった方が、今年無事リベンジ合格された分が含まれているからでしょうか…?

2024年度 専門医試験・更新試験 合格者一覧|日本周産期・新生児医学会

 

これらのデータを見ると、書類審査に通ることがキーポイントであるように感じられます。かつて設けられていた面接(口頭試問)が無くなり、それを補う目的でレポートに求めるレベルを上げたんでしょうか…?

 

今後の投稿で、レポートの注意点や、試験勉強などについてお話したいと思います。

 

 

 

 

 

 

日本周産期・新生児医学会 専門医について その2

日本周産期・新生児医学会 専門医について その1の続きです。

 

新生児専門医試験の受験資格についてお話します。

 

2024年度の「専攻医としての受験資格」は、下記のように記載されています。

 

①専攻医としての受験資格 
(1)医師免許証(医籍)を有する. 
(2)基本学会である日本小児科学会,日本産科婦人科学会のいずれかの専門医である. 
(3)資格認定試験を受験する時点で 3 年以上継続して日本周産期・新生児医学会会員であり,会費を完納している. 
(4)基本学会専門医資格を取得後,研修の届出を行っている. 
(5)研修の届出を行った後,認定施設における3年以上の研修を行い,研修年次報告書を毎年提出している. 
(6)規則付則に定める必要研修症例数を有している. 
(7)研修期間中に認定施設を異動した場合及び指導医が交代した場合,変更届を提出している. 
(8)所定の単位を取得している. 

 

これらは、日本周産期・新生児医学会のホームページにある「学会からのお知らせ」に毎年3月頃に掲載される「専門医試験 告示」の中に記載されています。研修登録をされている先生方には、告示が発表されればメールが届きます。毎年度マイナーチェンジがあるかもしれませんので、受験される先生方は必ず受験年度の告示を熟読して出願するようにしてください。

学会からのお知らせ|日本周産期・新生児医学会

 

研修の届け出に関しては、もし新生児科医に少しでも興味があるのであれば、後期研修が終われば直ちに届け出をしておくようにしましょう。届け出をして研修開始が認められてから3年研修を積む必要があり、どれだけ有名な高次医療機関で研修を積んでいたとしても後から年度を遡って研修開始とすることはできませんので注意してください。

 

小児科専門医試験は、早ければ後期研修が完了した次の年度(例えば、後期研修が2024年3月で研修修了なら、2024年の9月頃)に受験すると思います。新生児専門医の研修期間は、「小児科専門医試験に合格した時の年度」を含めることができます。つまり、2024年9月に受験して合格した場合は、研修開始を2024年4月にすることができます。小児科専門医試験に落ちてしまった場合は、その受験した年度は研修期間として認められません!

 

研修の年次報告書はレポートのようなものではなく、学会の会員ホームページ上からページの指示に従って入力する簡単なものになっています。

 

ちなみに、専攻医が提出する年次報告書とは別に、指導医側が提出する「施設年次報告書」というものがあります。これは指導医(研修責任者)が毎年登録する必要があるものであり、施設の入院実績や、研修している専攻医の名前などを届け出るものになります。

 

専門医試験担当者にメールで問い合わせて確認しましたが、万が一専攻医の登録を責任者の先生が忘れてしまっていたとしても(例えば、専攻医が複数人いる施設において、責任者の先生がうっかり専攻医Aくんだけを登録するのを漏らしてしまっていた、というようなケース)、施設として年次報告書が提出されてさえいれば専攻医が受験資格を失うことはない(つまり先ほどのAくんは受験資格を失うことはない)ようです。しかし、短期研修などで研修場所を移したことがある先生に関しては、念の為、施設年次報告書に自分を登録しておいてもらうよう研修責任者の先生にお願いしておきましょう。

 

会費の完納については、受験する当年度の分についても納めている必要があります。ちなみに私は、出願した時点ではまだ振り込んでいませんでした(忘れていました)が、受験担当窓口から「納められていませんので振り込んでください」と丁寧にご連絡をいただき、その後に振り込むことで事なきを得ました。指定された期間までに振込をしなかった場合は受験資格を失います。

 

研修単位については、案外ギリギリになったりしますので計画的に学会へ参加するようにしましょう。「日本周産期・新生児医学会学術集会」「日本周産期・新生児医学会周産期学シンポジウム」「日本小児科学会学術集会」「日本小児科学会の地方会」は最低参加するようにしておきましょう。小児科専門医更新の際に必要な教育単位の取得も忘れずに。

 

ちなみにこれは今後見直されるかもしれませんが、学会発表の内容に関しては審査の対象外になります。つまり、極端な話ですが、学童期白血病の症例を日本小児科学会学術集会で発表していたとしても、筆頭演者なら参加単位5単位に加えて5単位追加の合計10単位が認められます。

 

FAOPSなどの国際学会に関しては、恐らく単位として認められると思いますが、出願してから個別の審査が必要になりますので、万が一含められなくても出願資格が満たされるようにしておく方が無難でしょう。もし単位として提出されたことがある先生がいらっしゃれば、コメントくださいますと幸いです。

 

下記に、研修単位となる業績を2024年度告示から引用して記載します。

受験資格及び研修単位となる業績は,暫定措置規定が適用されるので,下記を確認すること.  
【単位の解説(研修単位となる業績について)】 
以下の項目の合計が30単位以上,かつ*の合計が20単位以上であること. 
(1)研修単位10単位/回  
  1)周産期・新生児学に関連した学術論文を査読制度のある雑誌に筆頭著者またはcorresponding author として発表し,それを専門医認定委員会が認めた場合* 
  2)以下のいずれかへの学術集会への参加(筆頭演者としての発表があれば5単位を追加) 
   日本周産期・新生児医学会* 
   日本周産期・新生児医学会周産期学シンポジウム* 
  3)国内外を問わず,周産期・新生児学に関連する学会または研究会に参加して筆頭演者として発表し,専門医認定委員会が認めた場合 
(2) 研修単位5単位/回 
以下のいずれかの学術集会への参加(筆頭演者としての発表があれば5単位を追加) 
日本産科婦人科学会(地方会も含む)* 
日本小児科学会(地方会も含む)* 
日本小児外科学会 
日本新生児成育医学会 
日本新生児成育医学会教育セミナー 
日本麻酔科学会 
日本母体胎児医学会 
日本糖尿病・妊娠学会 
(3)2013 年度までに参加した学会または研究会の単位は,暫定措置規定第11条の規定に関わらず,研修開始後に取得した単位を承認する. 

 

うっかり研修期間外の学会参加実績を含めないように注意しましょう!これはレポートに使用する症例に関しても同じ事が言えますね。

 

 

日本周産期・新生児医学会 専門医について その1

 

 

こんにちは皆さん。

 

「新生児専門医」になるためには、日本周産期新生児学会の専門医試験に合格する必要があります。

 

日本周産期・新生児学会は、「母体・胎児専門医」、「新生児専門医」の2つの専門医制度を運営しています。母体・胎児専門医は産科領域、新生児専門医は小児科領域の専門医となります。

 

新生児専門医は小児科専門医のサブスペシャリティ領域であるため、まずは小児科専門医試験に合格して小児科専門医の認定を受け、その後に更に新生児研修を経た上で試験に合格する必要があります。ちなみに小児科専門医の合格率は70%程と言われており、自分の体感としてもそれくらいの確率で周りの知人も不合格になっている印象です。不合格になってしまった方も皆さん真面目に働かれている先生ばかりなのですが…。

 

現行の新生児専門医制度は旧制度であるため、今後、制度の変更に伴い専門医試験の内容や形式、難易度は変更される可能性が高いと考えられます。なおこの旧制度による専門医研修は、2023年度で受付が終了されており、2024年4月1日以降に新規に新生児専門医を志して研修を開始するためには新制度プログラムへの登録が必須になります。

 

指導医に関しても、認定指導医という形で認められている先生がいらっしゃいますが、この認定は暫定措置であり、こちらも新制度への移行が進められています。認定指導医制度は2029年度をもって終了となるため、認定指導医の先生方は2029年度までに専門医試験に合格し、正式な指導医認定を受ける必要があります

 

新生児専門医試験は現在、レポート等の提出による書類審査と、CBT形式の試験の2段構えとなっています。この書類審査がかなり厳しいというウワサです。書類審査通過率は別の回でご紹介します。

 

のちのちのブログで、研修の流れ、出願の流れ、レポートの作り方、CBT試験の雰囲気をお伝えしたいと思います。

 

日本周産期・新生児医学会 専門医について その2